麦汁濃度

チェコでビールを飲もうとお店に入ったとき、あるいは自室で飲もうとスーパーに立ち寄ったとき、日本では見慣れないとある数値が、ビールの銘柄に添えて書かれています。そしてその意味を知らなければ、戸惑ってしまうに違いありません。

典型的なビールの表記

10°、12°、14°…。チェコのビールってそんなにアルコール度数が高いの!?ご心配なく、アルコール度数ではありません。これはチェコ独自の指標、麦汁濃度(Stupňovitost/ストゥプニョヴィトスト)、あるいはバリング度というものです。本ページでは麦汁濃度という表記で統一させていただきます。

PRIMÁTORの24°ポーター

この指標は、厳密にいえば、ビールを醸造する際に使用する麦汁内に含まれる、発酵可能な物質の含有量をパーセンテージで示しています。ただし、麦汁内の発酵可能物質の約95%は糖なので、麦汁内に含まれる糖分と考えて差し支えありません。この指標は、19世紀のプラハ・ポリテクニック(チェコ工科大学の前身)で学長を務めた、カレル・バリングが糖度計を開発し、麦汁の糖度測定が始まったことに由来しています。

なぜ麦汁濃度をわざわざ示しているのでしょうか?それは、ビールの味の目安になるからです。麦汁濃度が高いと、ビールの元となった麦汁に糖分が多く含まれているということになり、その分完成したビールにも糖分が残り、味が濃くなる傾向にあります。逆に麦汁濃度が低いと、ビールはキレのある、ドライな味わいになります。ちなみに、10°、11°、12°くらいがラガーに平均的な麦汁濃度で、私たちの舌にもなじみある味です。

下の画像では、同じ醸造所(Cvikov)のレジャークを、10°、12°、13°と並べています。ほんの少しですが、だんだん色が濃くなっています。

違いが分かりますか?

ちなみにこの麦汁濃度は、アルコール度数とも若干の相関性があります。麦汁内の糖分をビール酵母が分解することで、アルコールと二酸化炭素が発生します。つまり、麦汁濃度が高いほど、分解可能な糖分の量も増えるわけですから、それだけアルコール度数が高くなる傾向にあります。

"°"が麦汁濃度、"%"がアルコール度数

もちろん、麦汁濃度が高くても、長時間発酵させれば糖分が分解されて、ドライなビールになりますし、低くても発酵時間が短ければ糖分が残り味の濃いビールが出来上がります。発酵時間をどれだけとり、旨味、炭酸、アルコール度数のバランスをどのようにするかは醸造家の腕次第。それでも、どんなビールが出てくるかを予想するのには非常に役立つ指標ですので、チェコを訪問された際はぜひご活用ください。

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