ビールのスタイル

ここではチェコで主に飲むことが出来る、ビールのスタイルについて紹介します。

表記は、

チェコ語名(読み方)/日本での一般的呼称

という順番です。

PILS(ピルス)/ピルスナー

チェコで飲むビールで、麦汁濃度で紹介した、麦汁濃度によるカテゴリだけ表記されていれば、ピルスナータイプのビールです。ホップの苦みが強く、のど越しの良い、日本でも定番のスタイルです。ピルスナーという名前は、チェコのプルゼニの醸造所が、1842年9月に醸造を始めたことに由来しており、プルゼニのドイツ語読みから、ピルスナーという名称が生まれました。

VÍDEŇSKÝ LEŽÁK(ヴィーデンスキー レジャーク)/
ウィンナーラガー

赤銅色で、若干甘みがあり、ローストな香りと、軽いホップの苦みが特徴です。“ウィンナー”という名前があるように、オーストリアのウィーン発祥で、醸造家Anton Dreher氏によって、1841年に初めて醸造されました。

BOCK(ボック) / ボック

暗い色で、甘みがあり、アルコール度数の高めのビールです。いわゆる黒ビール(黒のピルス)と似たような見た目をしていますが、味は全くの別物で、濃厚な果実酒に近い味わいになっています。アルコール度数は最低でも6.7%で、中には10%を超えるものもあります。飲む際の最適温度は9℃とラガーの中では比較的高く、またアルコールで体を温めようと、冬の寒い時期にちびちびと飲むのがスタンダードとなっています。更にアルコール度数を高めた、DOPPELBOCK(ドッペルボック)というスタイルもあります。

KOUŘOVÉ[NAKUŘOVÁNÉ] PIVO
(コウジョヴェー[ナクジョヴァーネー] ピヴォ)/ラオホビール

モルトを木やピートで燻製させた、薫香の香ばしいビールです。燻製されたモルトを使えばこのスタイルとなるため、それを上面発酵させれば薫香あるエールに、下面発酵させれば薫香あるラガーが出来上がります。

BŘEZŇÁK(ブジェズニャーク)/メルツェンビール

アルコール度数が6%程と高く、ホップの苦みも強いラガーです。かつては、春と夏の温かい時期には、空気中の細菌がビールの発酵に悪影響を与えてしまうため、ビールの醸造が出来ませんでした。例えばバイエルン公国では、1533年に、4月23日~9月29日までビールの醸造を禁止する法令が出されたほどです。そのため暑くなる前に、夏の間飲むビールを作っておかなければならなかったのですが、普通のビールでは夏の暑さでダメになってしまうため、アルコール度数の高い、ホップをたくさん使用した腐食しにくいビールを3月に多量に仕込んでいました。そういった背景から、このビールは、březeň(チェコ語で3月の意味)から名前を取り、BŘEZŇÁKと呼ばれるようになりました(ドイツ語ではMärz→märzen(メルツェン))。

ちなみにチェコには、BŘEZŇÁKというブランドのビール醸造所がありますが、これは醸造所がチェコ北部の街、Velké Březno(ヴェルケー ブジェズノ)という街にあるからこの名前になってるだけで、中身はピルスナータイプのレジャークです。

エール

PALE ALE(ペール エール)/ペールエール

ペールエールとは、「淡色のエール」という意味で、18世紀の初め頃、イギリスの醸造家が、石炭でモルトを乾燥させることによって、元来のエールよりも薄い色のエールを作ったことから、この名前が付きました。バナナのような甘い芳香と、苦みが抑えられ、マイルドで甘い飲み口が特徴的です。ペールエールを基に様々なスタイルが派生したこともあり、今や「エールといえばこれ!」といった、代表的存在になっています。

IPA(イパ)/インディアンペールエール

ペールエールの一種です。‟インディアン”という名称は、大英帝国の時代、インドのイギリス人駐在員にビールを本国から送る際、長期間の航海と高温に耐えうるビールを作るため、消毒目的でビールにホップを大量に投入したことに由来しています。強い苦みとアロマのようなホップの香りが特徴で、また果物や、ハーブで香りづけを行うこともあります。一般に麦汁濃度は14°~16°、発酵時間は長めにとるので、アルコール度数が7%程度と高めになります。

チェコではメジャーなビール会社ではIPAはほとんど作られておらず、その生産はminipivovar(ミニピヴォヴァル/小規模醸造所)が中心となっています。

APA(アパ)/アメリカンペールエール

1981年にアメリカの醸造所(Sierra Nevada Brewing)で初めて作られた、比較的新しいスタイルのペールエールです。アルコール度数は5~7%、麦汁濃度は12°~14°が一般的です。アメリカのホップを使い、柑橘系のような香りと、カラメル系の弱い甘さが特徴的です。苦みはそこまで強くありません。

NEIPA(ネイパ)/ニューイングランドペールエール

アメリカの東海岸、ニューイングランド地域のバーモント州から始まったことからこの名前がついています。濁りのある色味が特徴で、パイナップル、オレンジ、マンゴーとも形容されるような、フルーツのような香りを持っていて、しばしジュースのような味わいにさえなる、飲みやすいタイプのビールです。ビールの醸造時にフルーツが使用されているわけではなく、ホップの香りによってフルーツっぽい香りを生み出しています。また、たんぱく質の多いオーツや小麦を麦芽に多く使うことで、独特の濁りを生み出しています。

SINGLE(シングル)/シングルホップIPA

名前の通り、一種類のホップのみを使用したIPAです。一般には複数のホップを混合することで、バランスの取れた味に調整しますが、シングルでは、そのホップ本来の味を楽しむことが出来ます。

PŠENIČNÉ PIVO(プシェニチュネー ピヴォ)/白ビール

麦汁をつくるモルトの中の、小麦の比率を高めたビールです。濁りのある色をもち、バナナや、はちみつと形容される香りと、深く甘みのある味が特徴です。チェコの法律では、抽出物の中に3分の1以上の小麦が含まれていれば、PŠENIČNÉ PIVOを名乗ることが出来ますが、有名なバイエルンのヴァイツェンビールでは、その割合は少なくとも50%であり、また、70%に至るビールもよくあります。

BERLINER WIESSE/(ベルリナー ヴァイセ)

ナポレオン戦争で当時のドイツ地域に進軍した兵士が、その発泡性と優美さから「北のシャンパン」と評した、上品な味と独特の酸味が特徴のビールです。この酸味は、発酵段階で乳酸菌を投入し、乳酸発酵させていることに由来します。初めて作られたのは、16世紀のハンブルクですが、その後ベルリンに定着しよく飲まれたことから、ベルリナーという名前がつきました(WIESSEは白ビールの意味です)。19世紀にはベルリンとその周辺地域にある、700以上の醸造所で作られていましたが、今では2つしか残っていません。このビールの多くは、小麦50%、大麦50%の割合で作られているため、広義ではPŠENIČNÉ PIVOの一種です。

PORTER(ポーター)/ポーター

強く焙煎されたモルトの香ばしい香りと苦み、強めのアルコール度数が特徴的なビールです。ポーターは18世紀のロンドンで、労働者向けに安いビールを提供しようと、古いビールと新鮮なビールをミックスして提供したことに始まります。元祖のポーターは今のように真っ黒ではなく、ブラウンエールなどを混ぜて作られたため色は茶色で、強い苦みと薫香、そして古さゆえの若干の酸味があったと言われています。そのポーターが労働者の間でヒットし、醸造所で同じような味をした”新鮮な”ポーターが作られるようになりました。20世紀の初めにはロンドンの酒場から一度姿を消しますが、最近また飲まれるようになりました。

STOUT(スタウト)/スタウト

ポーターに似て、強い薫香とカラメル系の味が特徴のビールです。スタウトという名称は元々、18世紀のイギリスで、度数や味の強いポーターのことを指していました。その後の醸造技術の進歩によって焙煎したモルトが使われるようになると、ポータよりもホップの特徴があり、より暗い色のビールのことをスタウトと呼ぶようになりました。アイルランドのGUINESS社のスタウトが世界的に有名です。また子ジャンルとして、チョコレート系の香りが特徴のDry Stout、10%を超える強いアルコール度数をもち、ワインやリキュールのようとも評されるImperial Stoutなどがあります。

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